“Ilive in Tokyo.” を過去形にしなさいという問いに “ I live in Edo.”と答えたという、故長嶋茂雄氏。日本語教師であれば、動詞を過去時制にするが、天才と呼ばれる偉人は、名詞を過去時制にする。発想が常人には及ばない。
その長い江戸時代が終わり、明治に入ると、江戸は東京と呼ばれるようになる。
明治時代には、数多くのお雇い外国人が日本に来、日本の近代化に大きく貢献することになる。
その中のひとりに、ラフカディオ・ハーン(日本名、小泉八雲)がいる。彼は、日本の土を踏んで以来、松江中学、旧制第五高等学校(現、熊本大学)、東京帝国大学、早稲田大学などで教鞭を執っていた。その間、日本の自然、情景に惹きつけられ、印象記、随筆、論文、伝記や怪談ばなしなどを多く英語で記し、世界へ発信。日本の interpreterとして、世界に日本を知らしめた。
ラフカディオ・ハーンが、第五高等学校在職中(1894年)に行った講演がある。「極東の将来」である。これは、当時の日本への、そして広くアジアへ向けての警鐘であると言える。例えば、その講演の中にはこうある。「費用の多くかかる民族は、その結果、ことごとく消滅する可能性がある。自然は偉大な経済家であり、決して間違いをしない。生存最適者は自然と最もよく共生でき、質素な生活で満足できる人びとである。これが宇宙の法則である」と。ハーンが130年前に訴えた言葉は、地球環境、経済破綻など多くの分野にもあてはまるものだと思える。偉大なる先人の知恵と警鐘に、我々は耳を傾ける時なのかもしれない。
小泉八雲は、新宿でその生涯を閉じている。新宿区内には、小泉八雲旧居跡、小泉八雲記念公園がある。(桃井)



