
フランスの後期印象派の画家、セザンヌは、産業革命以後、機械によって作られた人工物が生活空間にあふれ始め、科学主義、実証主義、商業主義が台頭し、効率性、利便性、商品性といった新しい価値が浸透していく社会の変貌を目の当たりにした。そうした時代にあって、「感覚」という〈本能〉や〈直観〉の力を信じ、そこに自らの芸術の根源を求め続けた点で、機械による間接的で自動的な造形とはまったく異質な、自らの眼と手による直接的で真に創造的造形の可能性を同時代に示し続けた。
この絵の前に立つと、わたし自身の風景の記憶、子どものころの埼玉の風景、そして武蔵野の雑木林がなぜか引き出されて、懐かしい。実際の風景はこの絵ほど美しくはないけれど、セザンヌの絵を見続けてきたことによって、知らぬ間に彩られたことは確かであろう。(織田)
by hinokigaigo
| 2025-01-28 20:45
| ひのきの講師

