大学院進学クラスの読書感想文を読んで②

普段、授業をしていると、留学生たちの大半が、日本に来る前から日本のアニメに馴れ親しんでいることがわかります。聞いたことのないアニメのタイトルを留学生から知らされて、後で調べて確認してみるということもあります。

 

今回の課題文は、映画監督/アニメーション作家である宮崎駿さんの著書『本へのとびら―岩波少年文庫を語る』(岩波書店)です。宮崎さんは「子どもにむかって絶望を説くな」と言います。学生たちは、この言葉を、アニメの現状を踏まえたメッセージだと受け止めました。感想文の内容は実に多彩で、自分が教えている学生たちはこんなに感性が豊かだったのかと驚かされます。彼らの心の中では、子どもだった過去と成長している現在とが途切れることなく、あたかも、一本の光の矢として繋がっているかのようです。

 

ところで、日本のアニメ作品は現在、作画、ストーリー、キャラクターなど、どの要素においても多様化し、私たち大人も、子どもと同様、主体的にアニメを楽しむ時代にいます。その必然的な結果なのかどうかわかりませんが、それこそ人間の存在というのは“どうにもならない”ものだと、絶望的な気持ちにさせるような作品が見受けられる機会も増えているように思います。

 

しかし、学生たちの感想は、そのような「ニヒリズムやデカダン」に抗う希望の精神と豊かな感受性に満ちています。

例えば、学生Pは、小学生の時に観た『千と千尋の神隠し』で、「千尋さんと一緒に頑張った友達と別れ」なければならない理由や、「いろいろな人と出会ったり、いろいろな人と別れたり」することの意味を、今は理解できると書いています。学生Wは、そこに登場する“カオナシ”が千尋と一緒に電車に乗るシーンは、“ずっと自分のそばにいて、自分を応援し続ける友達の顔を同時に思い出させてくれる”と、大人になるまでの道のりを振り返り、友達に感謝しています。

一方、大人になった今と子ども時代との繋がりを信じて模索する学生もいます。学生Hは、「いつも自分のことを信じていて、何でもできると」感じていた子どものころの「簡単の生活や単純な性格などを懐かし」(原文ママ)み、学生Kは、子どものころ、植物や玩具や鳥に、人と同様の“意識”があると思って、それらと「ロールプレイをやっていた」としつつ、「この夢はいつなくなたんでしょう」(原文ママ)と問うています。

 

こういった文章から、学生たちは、すでに異文化を克服する術をアニメから体得しつつ、自分の将来への道筋を模索していることが感じ取れます。

 つまり、子供時代という原点に回帰することで、子どものころに大切だったものが、大人になってわかることもあります。彼らは感想文を書いて思索することで、今まさに、自分に適した進路を見つけ、人生のゴールにシュートを決めんばかりの勢いです。

不肖日本語の教師からすれば、アニメは日本文化への橋渡しとして、外国人が日本とつながるスタートだったはずが、気がついたら留学生は、すでにそれぞれが生きる原動力として持ち、ひとつのゴールを見据えています。まさに“半端ない”人生の歩みですね。(篠原)
  


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by hinokigaigo | 2018-06-22 18:26 | ひのきの作文授業