伊丹敬之著『創造的論文の書き方』

本学院の大学院クラスでは、他の一般クラスとは異なる独自のカリキュラムが実施されている。例えば、問題意識、研究テーマ、研究発表というのがそれにあたるが、中でも柱となっているのが、研究計画作成法である。大学院を目指す学生にとって研究計画書を書き上げることは避けて通れない関門である。大学院クラスでは、指定テキストに『実践研究計画作成法』を使い、基本から指導しているが、それ以外にこの『創造的論文の書き方』を参考図書として使っている。

  

著者は、一橋大学大学院で実際に指導している経験から論文の書き方について書き記している。著者の言葉を借りれば、「論文という一つのアウトプットを作り上げるプロセスで必要とされる本質的な思考は、(中略)さまざまな世界でものを作り上げている人たちの本質的思考と通ずるものがある」という。

 

構成は、対話編で、研究するということ、文章を書くということ、考えるということ、勉強するということについて述べ、続く概論編では、テーマを決める、仮説と証拠を育てる、文章に表現する、止めを打つ、小さな工夫、ふだんの心がけについて言及している。

 

中でも仮説と証拠を育てる、という項目では、「現実から出発」することを強調している。理由は「現実は論理的である」からだ。仮説というと、何でも思い込めばいい理解する人もいるが、根拠もなく、自由気ままに考えを立てるのとは違う。それは妄想という。ここでは、現実に立脚し、論を立て、論を進める方法を提示している。

筆者によると、「現実のまとめ方」は、(1)現実の観察を、幅広いベースで定量的にデータとしてまとめる、(2)現実観察を、ディテールの細かいところまで定性的に記述してまとめとする、(3)現実の観察から抽象して作られた概念や論理をまとめとする、以上の3点になる。(1)(2)の観察の世界から(3)の抽象の世界へと広がることを目指すものである。

 

また、巻末に付録として「論文の書き方について」というメモ書きがついている。これは、著者が一橋大学大学院の学生たちのために、修士論文を書く際の注意事項をまとめたものである。これらは非常に役に立つものと思われる。

 

蛇足ではあるが、論文を具体的にどのように書いていけばいいかと迷っている学生には『新版 論文の教室』(戸田山和久著、NHK出版)を薦めるようにしている。論文を書く際のエチケット、マナーや図解を使っての説明、おすすめの図書がついている。これもまた良書である。(桃井)
 
*伊丹敬之著『創造的論文の書き方』、有斐閣、2001年。
  


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by hinokigaigo | 2018-05-01 10:21 | おすすめの図書