私は大学院の修士論文作成時に、日本語の正確なデータ、出典などを知るために利用しました。参考になる資料が盛りだくさんです。視覚に訴える図・グラフ・表が豊富なため、興味のある分野・項目にピンポイントでたどりつき、詳細な説明で理解が進みます。
日本語教師であれば、是非一通り目を通してほしい書物です。そうすれば、さらに日本語の魅力を知ることとなるでしょう。
内容を一部ご紹介します。語数と「カバー率」のところです。
最も基本になる単語は「基本語彙」と呼ばれていますが、それ以外にどのくらいの語数があればコミュニケーションの手段として支障なく使えるのかというのが、語数と「カバー率」との関係です。
言語 語数 | 英語 | フランス語 | スペイン語 | 中国語 | 日本語 |
1〜1,000 | 80.5 | 83.5 | 81.0 | 73.00 | 60.5 |
1〜2,000 | 86.6 | 89.4 | 86.6 | 82.20 | 70.0 |
1〜3,000 | 90.0 | 92.8 | 89.5 | 86.79 | 75.3 |
1〜4,000 | 92.2 | 94.7 | 91.3 | 89.66 | - |
1〜5,000 | 93.5 | 96.0 | 92.5 | 91.64 | 81.7 |
計 | 93.5% | 96.0% | 92.5% | 91.64% | 81.7% |
〔出典〕国立国語研究所『語彙の研究と教育(上)』(大蔵省印刷局 1984)を基に作成
5言語を比べた限り、日本語以外の言語は5,000語で約92%をカバーできるのに対して、日本語は約81%止まりであることがわかります。他言語と同様の92%をカバーするためには10,000語(参考:旧来の日本語能力試験1級の語彙数=約10,000語)が必要とのことです(その理由を知りたい方は、さらに研究書を読み進めてください)。日本語学習者はもとより、日本語教育者の苦労をも示しているのではないでしょうか。
(T)
*林大監修『図説日本語』、角川書店、1982年。